第477話|精度は高かったのに、なぜその分析は捨てられたのか
— 正しい分析が現場で無力化される典型パターン —

第477話|精度は高かったのに、なぜその分析は捨てられたのか— 正しい分析が現場で無力化される典型パターン —

今回の結果です。

構築したモデルとそれを使った分析の結果を報告したとき、数値上の問題はありませんでした。

検証データでも安定しており、統計的にも妥当。

きちんと「正しい分析」です。

それでも、そのモデルも、その分析結果も、最終的に活用されることはありませんでした。

非常にもったいないことです。

会議の場で、誰かが強く反対したわけではありません。

否定されたわけでもありません。

ただ、次の意思決定に使われることがなかったのです。

このようなケースは、実務では決して珍しくありません。

失敗の本質は「間違っていたこと」ではない

この分析が捨てられた理由を振り返ると、「モデルの精度が低かった」「データが不足していた」といった技術的な欠陥は見当たりませんでした。

問題は別のところにありました。

今回の結果を踏まえ、何をどうすればいいのか、どう決めればいいのかが分からなかった

……という点です。

示した分析結果は、「自分たちの苦労話や、構築したモデルがどんなにいいものなのか」など、分析者視点のものでした。

要は、「では次に何をすべきか」という判断にはつながっていませんでした。

よくある失敗パターン①:結論が「複数並ぶ」だけの分析

捨てられる分析結果の典型的な特徴の一つが……

  • Aも効いている
  • Bも効いている
  • Cも無視できない

……という形で、すべてが正しそうに見えることです。

分析担当としては誠実な報告です。

しかし、判断する側から見ると、こう感じます。

「結局、何をすればいいの?」

選択肢が整理されていない分析結果は、意思決定を前に進めません。

先方に選ばせるとしても、自分なりの意見や視点、答えなどを持っておくことが重要です。

意見を採用してくれるかどうかは不明ですが、活用の丸投げは、よくありません。

よくある失敗パターン②:前提条件が説明されていない

もう一つの失敗パターンは……

  • どんな条件下で成り立つ結果なのか
  • どこまでが仮定で、どこからが事実なのか

……が明示されていないことです。

分析担当の頭の中では整理されていても、それが言語化されていないと、聞き手は判断できません。

結果として……

「想定外が起きたらどうするのか?」

……という不安だけが残ります。

よくある失敗パターン③:責任の所在が曖昧になる

分析結果が捨てられる最大の理由は、責任の所在が不明確になることです。

  • この分析を信じて判断してよいのか
  • 失敗した場合、誰が説明するのか

この問いに答えられない分析は、どれだけ精度が高くても採用されません。

モデルがそう言っているから」という説明は、組織では通用しないのです。

なぜ分析担当はこの失敗に気づきにくいのか

分析担当者は、モデル構築とそれを使った分析をするとき、どうしても次の観点で物事を見がちです。

  • 精度は十分か
  • 手法は妥当か
  • 統計的に正しいか

一方で、判断する側は別の視点を持っています。

  • この判断を人に説明できるか
  • 想定外をどう扱うか
  • 後から責任を引き受けられるか

この視点のズレが……

「正しいのに使われない分析」

……を生み出します。

捨てられなかった分析に共通していたこと

逆に、最終的に使われた分析には、ある共通点がありました。

それは……

  • 選択肢が整理されている
  • 判断に必要な論点が明示されている
  • どこまで言い切ってよいかが分かる

……という点です。

精度の高さよりも、判断のしやすさが重視されていました。

今回のまとめ

精度は高かった。手法も正しかった。

それでも捨てられた分析は……

  • 判断につながらず
  • 説明ができず
  • 責任を引き受けられなかった

……という理由で、組織にとって「使えなかった」のです。

分析が価値を持つかどうかは、正しさでは決まりません。

「使って意思決定され活用されたか」

この一点で評価されます。