これは、分析担当者から非常によく聞く言葉です。
データは十分に揃っている。使っている手法も一般的で妥当。検証結果も悪くない。
それでも……
- 会議ではあまり議論が深まらない
- 次の意思決定に使われない
- 評価や成果として扱われない
……といったことが起こります。
このとき問題になっているのは、分析の正しさそのものではありません。
多くの場合、問題は説明の設計にあります。
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評価される分析は、いきなり「結論」を言わない

少し意外に感じるかもしれませんが、実務で評価される分析ほど、最初から結論を強く言い切ることはありません。
たとえば、次のような説明を想像してみてください。
したがって、次回も同じ施策を実施すべきです。
一見すると分かりやすい説明ですが、会議の場では次のような疑問が生まれがちです。
- 他の選択肢は本当にダメだったのか?
- 前提が変わったら、この結論はどうなるのか?
- リスクはどこにあるのか?
組織の中で最終的な意思決定を行うのは、多くの場合、分析担当者ではありません。分析の役割は、結論を押し付けることではなく……
- 判断に必要な論点を整理し
- 選択肢を並べて比較できる状態を作り
- 判断に伴うリスクを見える形にする
……ことにあります。
そのため、「これが正解です」と言い切る分析は、かえって判断の余地を狭めてしまうことがあります。
説明は「誰が決めるのか」から逆算する

説明設計で最初に考えるべきなのは、次の問いです。
たとえば、同じ分析結果であっても、相手が変われば、求められる説明は大きく変わります。
- 現場担当者:具体的に何をすればよいのか
- マネージャー:複数案の比較と優先順位
- 経営層:全体への影響とリスクの大きさ
売上改善の分析結果を説明する場合でも……
- 現場向けには「どの施策を、いつ、どれくらいやるのか」
- マネージャー向けには「施策AとBを比べると、どちらが効率的か」
- 経営層向けには「全体利益や中長期への影響はどうか」
……といったように、示すべき情報は異なります。
この整理をしないまま説明を始めると、「話は分かるが、結局どう判断すればいいのか分からない」という反応になりがちです。
「なぜそうなったか」より先に示すべき全体像

多くの分析担当者は、「なぜその結果になったのか」を丁寧に説明しようとします。
もちろん、それ自体は重要です。
しかし、実務の意思決定の場では、順番が逆になることが少なくありません。
たとえば……
- この変数が効いていて…
- この期間で傾向が変わっていて…
……と理由の説明から入ると、聞き手は次の疑問を抱きます。
- それで、結局どの選択肢を考えればいいの?
- 判断のポイントはどこなの?
判断する側が最初に知りたいのは……
- 取り得る選択肢は何か
- それぞれのメリット・デメリット
- 判断した場合に何が起こるのか
……という全体像です。
この枠組みを示してから理由を説明することで、初めて「なぜそうなったか」が意味を持ちます。
説明できる分析は「リスク」をあらかじめ言語化している

評価される分析には、もう一つ共通点があります。
それは……
……です。
あらかじめ言語化しておくことで、判断する側は「最悪の場合」を想像しやすくなります。
- この前提が崩れたら、結論はどう変わるのか
- 想定外の事象が起きた場合、どこに影響が出るのか
結果として、意思決定に対する心理的なハードルが下がり、「判断しやすい分析」になります。
説明設計は「話し方のうまさ」ではなく「設計思想」

説明が苦手だから評価されない、というわけではありません。
問題は……
- 何を説明すべきか
- どこまで説明すれば十分か
- どこは割り切って省略してよいか
……といった点を、分析の段階で設計していないことにあります。
説明できる分析とは……
……だと言えます。
これは個人の話術やプレゼン能力ではなく、分析そのものの設計の問題です。
今回のまとめ
分析結果の評価は……
- 正しいかどうか
- 手法が高度かどうか
……だけで決まるわけではありません。
実務では……
- 判断に使えるか
- 責任を引き受けられるか
- 説明に耐えられるか
……という観点で評価されます。
説明設計は、分析を単なる成果物から、仕事として評価されるアウトプットへと変える鍵です。

