「今回の結果です。」
構築したモデルとそれを使った分析の結果を報告したとき、数値上の問題はありませんでした。
検証データでも安定しており、統計的にも妥当。
きちんと「正しい分析」です。
それでも、そのモデルも、その分析結果も、最終的に活用されることはありませんでした。
非常にもったいないことです。
会議の場で、誰かが強く反対したわけではありません。
否定されたわけでもありません。
ただ、次の意思決定に使われることがなかったのです。
このようなケースは、実務では決して珍しくありません。
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失敗の本質は「間違っていたこと」ではない

この分析が捨てられた理由を振り返ると、「モデルの精度が低かった」「データが不足していた」といった技術的な欠陥は見当たりませんでした。
問題は別のところにありました。
今回の結果を踏まえ、何をどうすればいいのか、どう決めればいいのかが分からなかった
……という点です。
示した分析結果は、「自分たちの苦労話や、構築したモデルがどんなにいいものなのか」など、分析者視点のものでした。
要は、「では次に何をすべきか」という判断にはつながっていませんでした。
よくある失敗パターン①:結論が「複数並ぶ」だけの分析

捨てられる分析結果の典型的な特徴の一つが……
- Aも効いている
- Bも効いている
- Cも無視できない
……という形で、すべてが正しそうに見えることです。
分析担当としては誠実な報告です。
しかし、判断する側から見ると、こう感じます。
「結局、何をすればいいの?」
選択肢が整理されていない分析結果は、意思決定を前に進めません。
先方に選ばせるとしても、自分なりの意見や視点、答えなどを持っておくことが重要です。
意見を採用してくれるかどうかは不明ですが、活用の丸投げは、よくありません。
よくある失敗パターン②:前提条件が説明されていない

もう一つの失敗パターンは……
- どんな条件下で成り立つ結果なのか
- どこまでが仮定で、どこからが事実なのか
……が明示されていないことです。
分析担当の頭の中では整理されていても、それが言語化されていないと、聞き手は判断できません。
結果として……
「想定外が起きたらどうするのか?」
……という不安だけが残ります。
よくある失敗パターン③:責任の所在が曖昧になる

分析結果が捨てられる最大の理由は、責任の所在が不明確になることです。
- この分析を信じて判断してよいのか
- 失敗した場合、誰が説明するのか
この問いに答えられない分析は、どれだけ精度が高くても採用されません。
「モデルがそう言っているから」という説明は、組織では通用しないのです。
なぜ分析担当はこの失敗に気づきにくいのか

分析担当者は、モデル構築とそれを使った分析をするとき、どうしても次の観点で物事を見がちです。
- 精度は十分か
- 手法は妥当か
- 統計的に正しいか
一方で、判断する側は別の視点を持っています。
- この判断を人に説明できるか
- 想定外をどう扱うか
- 後から責任を引き受けられるか
この視点のズレが……
「正しいのに使われない分析」
……を生み出します。
捨てられなかった分析に共通していたこと

逆に、最終的に使われた分析には、ある共通点がありました。
それは……
- 選択肢が整理されている
- 判断に必要な論点が明示されている
- どこまで言い切ってよいかが分かる
……という点です。
精度の高さよりも、判断のしやすさが重視されていました。
今回のまとめ
精度は高かった。手法も正しかった。
それでも捨てられた分析は……
- 判断につながらず
- 説明ができず
- 責任を引き受けられなかった
……という理由で、組織にとって「使えなかった」のです。
分析が価値を持つかどうかは、正しさでは決まりません。
「使って意思決定され活用されたか」
この一点で評価されます。

