第15話|指標設計(KPI設計)の質が、営業データ活用の成否を決める

第15話|指標設計(KPI設計)の質が、営業データ活用の成否を決める

営業データを集計したけど、その後、どのようにすれば営業活動に活かせるのかわからない……

よくこのような悩みを抱える方がいます。営業データ活用に限らず、データ活用全般に言えることです。

多くの場合、指標設計(KPI設計)の質に問題があります。

データを集計して「ふーん」となる

よくあるケースとして、溜まった営業データを、とりあえず集計し合計値や平均値を出してみる、というアプローチがあります。

例えば、個人やグループ別、課別、部別などで営業成績を合計したり平均値を計算したりし、個人間で比較したり、グループ間で比較したり、課や部などの部署間で比較したりします。

単に比較しても、〇〇さんは営業成績がよいな、△△課は営業成績がよいな、という感じのことが分かります。

しかし、残念なことに、多くの場合「ふーん、なるほどね。 で?」という感じで終わってしまい、多くの場合次に繋がりません。

子供のころの通知表に似ています。

通知表から自分の成績が悪いことが分かっても、その通知表をもとに具体的に何をすれば成績が上がるのかを、通知表は答えてくれません。人によって、通知表を見て、「今度こそ頑張るぞ!」という感じで、心を奮い立つ人もいることでしょう。奮い立つことがあっても、具体的に何をすればよいのかは答えてくれず、個人の頑張りに依存します。

要するに、営業データも、単に個人間や部署間の営業成績を比較しても、何をすればよいのかを答えてくれません

溜まった営業データを、とりあえず集計し合計値や平均値を出してみる、というアプローチが間違っているのでしょうか。実際は、間違っているわけではありません。合計値や平均値を見ることは、最低限押さえておくべき数値です。

賢そうな営業データ分析をしても「ふーん」となる

合計値や平均値を計算し比べるやり方は間違っていませんが、それで営業データ活用の成果がでないと、「本当に合計値や平均値を比べれるやり方がいいのだろうか」と、悩む人も少なくありません。

そうなると、回帰分析や相関分析といった、合計値や平均値を計算し比べるよりもちょっと賢そうな分析をしてみようと、考えう人がいます。

回帰分析や相関分析などの、ちょっと賢そうな分析をすることは間違いではありませんが、ちょっと賢そうな分析をしてみても、残念なことに、多くの場合「ふーん、なるほどね。 で?」となることには変わりありません。

結局のところ、賢そうな分析をすることと、営業データ活用の成否は関係ありません。理想は、合計値や平均値などを比較するといった、誰でもできそうなシンプルな営業データ活用で成果をだすことです。

データから何を見るべきなのか

営業データを使って、どのような集計をし分析をするのかは、何をしたいのかによります。

営業データ活用の目的がないと、どのような集計をだし分析するのかが分かりません。営業データ活用の目的が分かれば、どのような集計をし分析をすればよいのかが分かります。つまり、営業データ活用の目的次第です。

要するに、逆算アプローチです。営業データ活用の目的を最初に考え、営業データで何をしたいのか、そのためには、どのような営業データの分析結果があればよいのか、その分析結果を出すためには、どのような集計や分析をすればよいのか、その集計や分析をするためには、どのようなデータを集めればよいのか。

この逆算アプローチが、営業データ活用にとって、最善のアプローチなのです。ちなみに、営業データ活用に限らず、他のデータ活用も、この逆算アプローチは有効です。

営業データ活用時に見る、数字の集計値や分析結果が指標(KPI)の一部になります。数字の集計値や分析結果である指標(KPI)を見て、どのようなアクションをすべきかを考えます。数字の集計値や分析結果である指標(KPI)を出すために、データを集め集計し分析します。

要するに、営業データ活用の「」になるが「指標(KPI)」なのです。逆算アプローチの際に、この指標であるKPIをいかに設計するのかで、営業データ活用の成否が変わってきます。

でも、「さぁ逆算アプローチで指標設計(KPI設計)しよう!」となっても、そう簡単にはいきません。

しかし、幸運なことに、営業データ活用で見るべき指標(KPI)は、ほぼ決まっています。なぜならば、多くの企業の営業・販促活動は、製造現場などに比べるとそれほど大きくは変わらないからです。

3つの指標(KPI)とは

営業データ活用の基本となる指標は、以下の3つです。

  • 成果指標
  • ストック指標
  • フロー指標

成果指標は、文字通り受注などの営業成績のことです。受注件数や金額などです。

ストック指標とは、受注するまでの途中プロセスの案件数(未受注)のことです。例えば、引合件数や訪問件数、提案件数などです。

フロー指標とは、受注するまでの途中プロセス間の遷移率のことです。例えば、訪問済みの見込み顧客の内、何%が提案できたのかを表す数字(訪問後提案率)。提案済みの見込み顧客の内、何%が受注できたのかを表す数字(提案後受注率)。

多くの場合、営業データ活用の基本となる3つの指標(成果指標・ストック指標・フロー指標)を完璧に揃えることは無理です。多くの場合、いざ指標(KPI)を集計しようとしても、データが無いかデータが汚くて計算できません。それば、今後整備すべき営業データになります。

では、「今後整備すべき営業データが出揃わないと、営業データ活用はできないのか?」と、疑問に思う方もいることでしょう。

そんなことはありません、綺麗なデータがある程度溜まるのを待っていては、いつまでたっても営業データ活用はできません。今ある営業データで、営業データ活用を実現しなければなりません。そもそも、営業データ活用のモチベーションが落ちます。

指標設計(KPI設計)から始めよう

営業データ活用の要諦は、今あるデータで成果を出すことです。

したがって、営業データ活用を始めるときに最初にすべきは、今あるデータで「どのような3つの指標(KPI)を出せるか」を考えることです。

そうすると、今「出せる指標(KPI)」と今「出せない指標(KPI)」に分かれます。

今「出せない指標(KPI)」の中で、どうしても営業・販促活動をする上で、どうしても取得したい指標(KPI)を考え決めます。その後、その指標(KPI)を出すのに必要なデータの整備を検討し進めます。

そうしていくことで、データの質が高まり、データの質が高まれば指標(KPI)の質も高まってきます。なぜならば、何のために営業データを集めているのかが分かるからです。

さらに、補足的に他の指標(KPI)も考えてみましょう。あくまでも、成果指標・ストック指標・フロー指標は営業データ活用の基本となる指標です。その基本となる指標を軸に、補足的に必要な指標(KPI)を考えていきます。そのてき、その指標(KPI)でアクションが起こせ成果が上がるかどうか、が重要な指標(KPI)の採用基準になります。

要するに、指標設計(KPI設計)の上手くいけば、営業データ活用は上手くいくのです。逆に、指標設計(KPI設計)で躓くと、営業データ活用は困難なものとなることでしょう。