第47話|ビッグなデータ活用になるかどうかの成否を分ける、たった一つの質問

第47話|ビッグなデータ活用になるかどうかの成否を分ける、たった一つの質問

昨今、ビッグデータが騒がれて大分たちます。

不思議なことに、派生した用語(データサイエンスだの、AIだの、IoTだの)はたくさんあれど、未だに廃れないところを見ると、今回のデータ分析ブームは本物に近いのかもしれません。

ところで、「ビッグデータとは何か?」と問えば、人によって定義もまちまちで、正確なところはよく分かりません。少なくともデータであるということは分かります。

私の印象では、データが……

  • データの行数が多い
  • データの項目数が多い
  • データの種類が多い

のいずれかに当てはまれば、一様ビッグデータといってもよさそうです。

今回タイトルに「ビッグ データ活用」としたのは、「データ活用」自体が「ビッグ」(データを活用した大いなる成功)のことを言っています。

冗談めいた感じになっていますが、実は最近、こちらのほうが「ビッグデータ」の意味としてあっているのではないかと思い始めています。「ビッグデータ」と言われるとき、「データを活用した大いなる成功」を前提に話している気がするからです。

前置きが長くなりましたが、本題に入ります。

データ活用が上手くいっている企業と上手くいっていない企業、たった一つの質問で、そのデータ活用がビッグになるかどうかが見えてきます。

もし、あなたの会社や部署で、「データ活用して上手くいっていないかも」と感じましたら、このたった一つの質問をしてみてください。

そのデータの輝ける場所、あなたは知っていますか

私は約20年、社内外のデータ活用に携わってきましたあ。

ITの進化問わず、「データ活用の上手くいっている企業」と「上手くいっていない企業」、もしくは、「データ活用の上手くいっている組織」と「データ活用の上手くいっていない組織」、ちょっとした違いがあることに、あるときに気が付きました。

あるたった一つの質問に、どのように答えるかで、「データ活用の成否」つまり「ビッグなデータ活用になるかどうか」(もしくは、ビッグなデータ活用を実現してるかどうか)が分かりことに気が付きました。

その質問とは、以下です。

そのデータがどのように活躍しているか?
その活躍シーンのイメージを教えてください

つまり、「そのデータの活かしどころ(輝ける場所)、あなたは知っていますか」ということです。

よくない答え

そのデータがどのように活躍しているか?、その活躍シーンのイメージを教えてください」という質問に対する「よくない答え」がいくつかパターンがあります。

大きく以下の3パターンに分かれます。

  • 無言(シーンとする)……
  • 抽象的・概念的(具体的でない)
  • システムやツールの話しばかりで、「人の動き」が登場しない

無言(シーンとする)……」とは、関係者に質問すると誰も答えられず、フリーズ(膠着)状態に陥るということです。実は、超大企業に多かったりします。

抽象的・概念的(具体的でない)」とは、「何となく離反対策に使えそう……」、「新規顧客を獲得が効率化されそう……」、「クロスセル的な使い方ができると思うんだけど……」というもので、具体的な描写がなされていない状態です。

システムやツールの話しばかりで、『人の動き』が登場しない」とは、「CRMで、何となく離反対策に使えそう……」、「MA(マーケティング・オートメーション)ツール使えば、新規顧客を獲得が効率化されそう……」、「BIを現場が使えば、クロスセル的な使い方ができると思うんだけど……」という感じで、「抽象的・概念的(具体的でない)」にシステムやツールが登場するものの、そこに関わる人の描写がなされていない状態です。

少なくとも、売上分析の場合、営業パーソンやマーケターが登場しないと、どうしようもありません。彼ら・彼女らが、どのようにデータと付き合い活かすのかが見えてきません

一方で、よい答えとは、どのような答えでしょうか。

よい答え

そのデータがどのように活躍しているか?、その活躍シーンのイメージを教えてください」という質問に対する「よいない答え」には、いくつか特徴があります。

今回は、売上分析の例です。

  • 演者(人やシステム、ツール)が分かる
  • 人の動きが分かる
  • ERRCで整理されている

売上分析の場合ですと、少なくとも関係する営業パーソンやマーケター、場合によっては分析担当者や情シス部門などが登場しないと、シーンが見えてきません。

その上で、CRMやBIツールなどのシステムやツール類、データベースなど、登場する人と紐づけて登場している必要があります。

もちろん、いきなり「そのデータがどのように活躍しているか?、その活躍シーンのイメージを教えてください」という質問に対し、完璧に答えられる人は少ないです。

しかし、突っ込んでヒアリングを進めると、「そのデータの活かしどころ(輝ける場所)」を知っている方であれば、具体的に登場する「演者(人やシステム、ツール)」を回答していただけます。

そしてさらに突っ込んでヒアリングを進めると、「そのデータの活かしどころ(輝ける場所)」を知っている方であれば、「人の動き」も明確に回答していただけます。

逆に言うと、「そのデータの活かしどころ(輝ける場所)」が不明確な方の場合、突っ込んでヒアリングを進めると、登場する「演者(人やシステム、ツール)」や「人の動き」が、あいまいにしか回答できないことが、非常に多いです。

要するに、「データ活用で上手くいっていないかも」とあなたが感じるのであれば、まずは登場する「演者(人やシステム、ツール)」や「人の動き」を明確にしてみることを、お勧めします。

ERRCって何だ?

ERRCとはアクション・マトリックスといわれるもので、ブルーオーシャン戦略で登場する戦略キャンパスで使うツールです。ERRCは、業務改善やブランディングなど色々なところで使えます。

データ活用上のERRCの使い方について簡単に説明します。以下の4つです。

  • (1)Eliminate(取り除く):無くなる作業
  • (2)Reduce(減る):工数の減る作業
  • (3)Raise(増える):工数の増える作業
  • (4)Create(付け加わる):新たに発生する作業

データ活用を始めると、よいことだけではありません。「今までやっていなかった新たな作業」が増えたり、今までやっていた作業が「面倒になり余計に時間がかかる」こともあります。

例えば、営業の案件管理用にデータベースからデータ抽出していただけだったのが、分析用のデータを抽出し加工し、分析担当者にデータを渡す手間が増えたりします。つまり、データ抽出するという作業の工数が増えたことになります。さらに、そのデータを使い今までやっていなかったようなデータ分析をするのならば、そのデータ分析は「新たに発生する作業」になります。

実際、「そのデータがどのように活躍しているか?、その活躍シーンのイメージを教えてください」という質問に対し、いきなりERRCを言える方には出会ったことはありません。かなり「そのデータの活かしどころ(輝ける場所)」が明確になっている方であれば、突っ込んでヒアリングを進めると、このERICも何となくではありますが回答してくれます。

今回のまとめ

今回は、「データ活用が上手くいっている企業」と「上手くいっていない企業」、たった一つの質問で、そのデータ活用がビッグになるかどうかが見えてくるという、お話しをいたしました。

そのたった一つの質問とは……

そのデータがどのように活躍しているか?
その活躍シーンのイメージを教えてください

……という質問です。

つまり、「そのデータの活かしどころ(輝ける場所)」を知っているかどうかを、確認するための質問です。

この質問をして、いきなり100点満点の答えを得ることは難しいですが、突っ込んでヒアリングを進めると、「そのデータの活かしどころ(輝ける場所)」を知っていれば、どんどん具体的に回答してもらえます。

もし、あなたの会社や部署で、「データ活用して上手くいっていないかも」と感じましたら、このたった一つの質問を、社内で関係者を集め、試しに実施してみてください。

次のような回答しか得られない場合、要注意です。

  • 無言(シーンとする)……
  • 抽象的・概念的(具体的でない)
  • システムやツールの話しばかりで、「人の動き」が登場しない

そのデータの活かしどころ(輝ける場所)」が具体的でない、典型的な回答です。

このような回答しか出ない場合、以下の3つの視点でデータ活用を整理すると、「そのデータの活かしどころ(輝ける場所)」が見えてきます。

  • 演者(人やシステム、ツール)
  • 人の動き
  • ERRCで整理

簡単に言うと、登場する「演者(人やシステム、ツール)」や「人の動き」を明確にし、ERRCの視点でどうなりそうかを整理する、ということです。

ちなみに、ERICとは次の4つの頭文字ととったものです。

  • (1)Eliminate(取り除く):無くなる作業
  • (2)Reduce(減る):工数の減る作業
  • (3)Raise(増える):工数の増える作業
  • (4)Create(付け加わる):新たに発生する作業

これで、だいぶ「そのデータの活かしどころ(輝ける場所)」が見えてくるのではないかと思います。

もし、「データ活用して上手くいっていないかも」と感じたら、このたった一つの質問をあなたの会社や部署で、実施することで、データ活用の見通しがだいぶ明るくなるはずです。あなたのデータ活用が上手くいくことを祈っています。