第476話|説明できない分析は、なぜ組織で必ず嫌われるのか

第476話|説明できない分析は、なぜ組織で必ず嫌われるのか
精度は問題ありません

分析担当として、この一言を言ったことがある人は多いはずです。

モデルの検証結果も良好で、数値的には非の打ちどころがない。

それでも、会議室の空気がどこか重くなる。

そして、必ずこう聞かれます。

で、この結果をどう使えばいいんですか?

この瞬間に感じる違和感こそが、今回のテーマです。

分析が間違っているわけではない。

努力もしている。

にもかかわらず、組織の中でその分析が歓迎されない。

これは個人の能力の問題ではありません。

構造の問題です。

組織における「分析」と「判断」は役割が違う

まず押さえておきたいのは、組織において「分析する人」と「判断する人」は、ほぼ確実に別であるという事実です。

  • 分析担当:データを集め、モデルを作り、結果を出す
  • マネージャー:複数の情報を踏まえて意思決定を行う
  • 経営層:その意思決定の責任を引き受ける

分析担当にとっては「正しい結果」であっても、判断する側にとっては「責任を取れる材料」になっていないことがあります。

ここに、最初の断絶が生まれます。

分析は正解探しですが、判断は責任選択です。この2つは似ているようで、まったく別の行為です。

精度が高いほど、説明責任は重くなる

よくある誤解の一つが、「精度が高ければ信頼される」という考え方です。

実務では、むしろ逆の現象が起きます。

  • 精度が低いモデル:「まあ参考程度に使おう」と割り切られる
  • 精度が高いモデル:「本当にこれで決めていいのか?」と厳しく問われる

精度が高いほど、その結果に基づく判断の影響は大きくなります。

だからこそ、判断する側は慎重になります。

このとき必要になるのが……

  • なぜその結果になったのか
  • どの要因が効いているのか
  • 想定外が起きた場合、どう説明できるのか

……といった説明責任です。

説明できない高精度モデルは、判断のリスクを一方的に押し付ける存在になります。

その結果、「使わない方が安全」という判断が下されることも珍しくありません。

ブラックボックスが嫌われる本当の理由

ブラックボックスモデルが嫌われる理由は、「中身が分からないから」ではありません。

本当の理由は……

説明できない結果について、誰が責任を取るのかが不明確になるから

……です。

組織では……

  • モデルがそう言っているから
  • AIの判断だから

……という説明は、ほとんど通用しません。判断を下す人は、必ず自分の言葉で説明する必要があります。

ブラックボックスな分析結果は、その説明作業を不可能にします。

だからこそ、技術的に優れていても、組織の中では敬遠されるのです。

「説明できる分析」が果たしている役割

説明できる分析とは、単にモデルの仕組みを解説できることではありません。

本質的な役割は……

  • 判断に必要な論点を整理し
  • リスクを言語化し
  • 複数の選択肢を比較可能にする

……ことにあります。

説明できる分析は、判断する側の仕事を楽にします。

  • どこまで言い切ってよいか
  • どこは前提条件付きなのか
  • どの部分に注意すべきか

……が明確になるからです。

この状態になって初めて、分析は「嫌われる存在」から「判断を助ける存在」に変わります。

問題はスキルではなく、設計思想にある

ここまで読むと、「説明できるように勉強しよう」「もっと分かりやすく説明しよう」と考えるかもしれません。

しかし、多くの場合、問題は個人の説明スキルではありません。

  • 何を説明すべきか
  • どこまで説明すれば十分か
  • どこは割り切ってよいのか

この設計思想が最初から共有されていないことが、混乱の原因です。

説明できない分析が嫌われるのは、説明の仕方が悪いからではなく、説明を前提に設計されていない分析だからです。

今回のまとめ

組織において、分析が受け入れられるかどうかは、精度では決まりません。

  • 判断に使えるか
  • 責任を引き受けられるか
  • 説明できるか

この3点が揃って初めて、分析は価値を持ちます。

説明できる分析とは、組織の中で通用する共通言語を作る行為です。