第32話|現場を無視した指標(KPIなど)に未来はない

第32話|現場を無視した指標(KPIなど)に未来はない

KPIなどのビジネス指標を設計するとき、最大限注意すべきことがあります。

それは、現場の「意見」や「考え」、「動き」などを考慮しているのか、ということです。

少なくとも、現場無視の指標(KPIなど)は、現場が無視します。当然ながら、指標(KPIなど)を使うデータ活用は、まったく機能しなくなります。

現場の何を考慮すればよいのか?

では、具体的に、現場の何を考慮してKPIなどの指標を設計すれば良いのでしょうか?

それは……

  • 指標を設計する時、現場では具体的に「どのような動き方」をしているのか?
  • 現場で積極的に数字を見ている人は「どのような数字を見ている」のか?
  • 「どのような数字を見たい」と思っているのか?

……などの現状を整理し、指標設計したほうがよいでしょう。

よくある勘違いに、現場の数字リテラシーは低く、指標(KPIなど)のようなものは見ていない、というものです。

このように認識している人に限って、現場の営業パーソンやマーケターと、最近じっくりと話しをしていない印象があります。もちろん、すべてがそうだというわけではありませんが。

実際に、インタビューさせて頂くと、現場では現場なりに何かしらの指標(KPIなど)を見ているケースが多いものです。

確率導線を設計していた新人営業パーソン

ある企業で、実際にあったことです。

入社1年目の新人が、新人研修の一つとして営業部に配属されました。配属期間は第2四半期の3カ月間です。

そこで、ある新人がトップセールスに躍り出たのです。第2四半期に、その営業部内の契約件数で1番になり、社内表彰されたのです。

彼は、理系で技術職希望の新人です。話し上手というわけでもなく、商品知識もそれほど豊富ではありません。では、どうしてトップセールスになったのでしょうか。

これはインタビューして分かったことですが、簡単にいうと彼なりの指標を設計してから、営業活動を本格化していました。

先ず、言われた通りに営業活動をして彼自身のデータを記録しました。その後、指標を設計し、目標を設定した後で営業活動を再開しました。

簡単にいうと、何件テレアポをすれば何%の確率でアポイントメントが取れ訪問できる。訪問した見込み顧客のうち何%の確率で見積依頼が来る。見積依頼のあった見込み顧客のうち何%で受注できる。ということだけです。後は、どれだけリードタイムがあるとか、どの業界のどの部署がよいかとか、誰と名刺交換するとよいとか、そのようなことを、彼はノートに記録し、持ち帰ってExcelで分析しただけでした。

ちなみに彼は、技術の部署に配属され、そこでも優秀な技術者として社会人生活を謳歌していましたが、最近転職してしまいました。

興味を持たないと、誰も教えてくれない

新人の彼が、このようなことをやっていたことを、誰も知りませんでした。彼自身も、素晴らしいデータ分析をしているとも思っていませんでした。

このようなことは、よくあります。興味を持って聞いてみると、なるほどという感じで、どのような動きをしているとか、どのようなデータを見ているとか、どのように分析をしているとか、色々なことを教えてくれます。

ある人は、ある部署の課長と名刺交換し、商品説明するときに何回頷かせる(もしくは目を合わせてくれる)と受注確度が高まる、みたいなことを言っている営業パーソンもいました。本当に受注確度が高まるかどうかは知りませんが、それなりの営業パーソンの中には、それなりの指標(KPIなど)のヒントが眠っています。

少なくとも、興味をもって聞いてみないと、教えてはくれません。

現場から遠い、経営企画や情報システムの部署や、エライ人(役員や本部長、部長など)、外部のコンサルタントだけで指標(KPIなど)を考えるとき、どれだけ現場の話しを聞きに行っているでしょうか。

現場を無視した指標設計はよくない

つまり、現場を無視した指標設計はよくない。

現場から遠い、経営企画や情報システムの部署や、エライ人(役員や本部長、部長など)、外部のコンサルタントだけで指標を設計すると、現場の実情とかい離した使いにくい指標になってしまいます。

現場の実情とかい離した使いにくい指標は、現場では活用されません。単に、経営企画やエライ人(役員や本部長、部長など)が、定期的に見て自己満足するだけで、何ら収益を生み出しません。逆に、余計なコストがかかるだけです。

少なくとも、現場の実情とかい離した「こうあるべきという指標」を、現場で使ってもらいたいのであれば、そのための教育と訓練をしっかりすべきでしょう。

突然、扱いに困る指標を使えといわれても、現場では扱いに困るだけで困惑します。

指標(KPIなど)設計でけでなく、社内システムの導入や社内の新制度などにも当てはまります。多くの場合、余計な指標(KPIなど)やシステム、制度は、現場にとって足かせとなり、本来の動きを鈍らせるだけです。

要するに、現場を無視した指標(KPIなど)に未来はありません。