第61話|売上分析で先ずやること…… それはグロスのデータを眺め、あることに気づくこと

第61話|売上分析で先ずやること…… それはグロスのデータを眺め、あることに気づくこと

営業もマーケティングも、データ分析をするぞ! と考えたとき、最初に手を付けるべきことがあります。

それは、グロスの売上データを時系列に並べ、グラフ化などをして眺めることです。グロスとは全体という意味で、会社全体の売上とか、扱っている商品全体の売上とか、所属している部署全体の売上とかです。

そんなこと当たり前だろ! と思いがちですが、意外とできていない。

今回は、やっていそうで十分にできていない、売上分析で先ずやるべき、グロスのデータを眺めてみる、ということについてお話しいたします。

どうも売上分析しているのに、売上に貢献していないなと感じられていましたら、一つのきっかけになるかもしれません。

グロスのデータを眺めているようで、眺めていない

グロスとは、全体という意味です。何を全体とするかで、変わってきます。

全体を、会社とするのか、自分の扱っている商品とするのか、自分の所属する部署とするのか、で変わってきます。何を全体とするかは、人それぞれですが、意外とグロスのデータを、見ているようで見ていないように感じています。

過去に何社かデータ活用のお手伝いをさせて頂きました。そのとき最初にやるのが、グロスのデータ(例:売上など)を眺めることです。

グロスのデータを眺めただけで、色々なことが見えてきます。

例えば……

  • データがどの程度キレイか?
  • データに異常値はないか?
  • 使えそうなデータはいつからか?

データ分析上、「使えそうなデータはいつからか?」を決めるために、グロスのデータを眺めます。そのため、「データがどの程度キレイか?」と「データに異常値はないか?」という視点で徹底的に見ていきます。

そしてすでにデータ分析している企業の場合、「このデータを使って、よく今まで分析していたなぁ~」と私自身驚きます。汚いデータのままデータ分析をしている企業が、結構多いようです。

実は、グロスのデータを眺めることは、「データ分析そのもの」だけでなく、その先の「データ分析の活用」上いい効果があります。データ活用上のビジネス理解が深まるからです。

データ活用上のビジネス理解が深まる

グロスのデータを眺めることで、データ活用上のビジネス理解が深まります。

丁寧に、売上などのグロスのデータを眺めると、通常では考えられない動きをしていたり、明らかに可笑しな跳ね方や落ち方をしているデータが発見されます。場合によっては、データが欠測(データが取得できていない)している場合もあります。

なぜ、売上などのグロスのデータが通常では考えられない動きをするのかは、データからは分かりません。そのとき、現場の人にヒアリングするしかありません。そうすることで、データ活用上のビジネス理解が深まっていきます。

データは、最近たくさん蓄積されるようになるといっても、まだまだほんの一部です。データからすべてが分かるほど、世の中にはデータは蓄積されていません。データだけで分からないことは、そのデータに近しい現場が知っています。

グロスのデータを眺め、変だなと思う個所は現場などに聞きに行く。その聞きに行くきっかけになるのです。

異常スコア(もしくは、外れ値スコア)

売上などのデータをパッと見ただけで、可笑しな箇所を発見することもあれば、そうでない場合もあります。見るべきデータがたくさんあると、ウンザリします。

データが欠測していれば分かりやすいですが、データがきちんと測定されている場合、そもそも、どのくらい逸脱したデータであれば可笑しいのか、判断に迷うこともあるでしょう。

そのようなときは、よく異常スコア(もしくは、外れ値スコア)という指標を使います。データの異常の度合いです。

例えば、ある統計モデルの残差を使い、異常スコア(もしくは、外れ値スコア)を算出します。ここでは詳しい話は割愛しますが、異常スコア(もしくは、外れ値スコア)は簡単に求めることができます。

つまり、売上などのグロスのデータを見るとき、ローデータをざっと眺めたりグラフ化し眺めるとともに、異常スコア(もしくは、外れ値スコア)をざっと眺めたりグラフ化し眺めるとよいでしょう。

ある統計学的な閾値を設定し、Excelなどでそこだけデータに色を付けて分かりやすくするのもよいでしょう。これだけで結構な割合で、データの可笑しな箇所を発見できます。

データクレンジングが甘いと成果が出にくい

このような、異常スコア(もしくは、外れ値スコア)を使ったやり方は、データ分析のデータ整備上、非常に重要になってきます。

そもそも、分析で使うデータが汚いとろくな目にあいません。データ分析結果の良し悪しは、利用したデータに大きく依存します。

より良いデータ分析結果を出したいなら、利用するデータもより綺麗なデータがよいでしょう。そのデータを綺麗にするために、異常スコア(もしくは、外れ値スコア)は非常に重要になってきます。

異常スコア(もしくは、外れ値スコア)をもとに、データの可笑しな箇所を発見したら、データ分析する上で次にすべきは、データのクレンジングです。つまり、データを綺麗にし分析で使っても問題ないようにします。

しかし、クレンジングできないような場合もあります。それでも構いません。そのクレンジングできない問題を抱えたまま、データ分析をし、後はデータ分析結果の解釈でカバーします。

要するに、異常スコア(もしくは、外れ値スコア)を使いグロスのデータを眺め、可笑しな箇所を発見することは、データのビジネス活用上も、データ分析上も、どちらにとっても非常に有意義なことなのです。

今回のまとめ

今回は、「売上分析で先ずやること……、それはグロスのデータを眺め、あることに気づくこと」というお話しをしました。

データ分析をする前、誰もがやることと言えば、ローデータのグロスをグラフ化したりし眺めることだと思います。

しかし、データ分析もしくはその活用が上手くいっていない場合、その誰もがやることが、甘かったりします。
ちなみにグロスとは全体という意味で、何を全体とするかで見えてくるものは変わってきます。全体を、会社とするのか、自分の扱っている商品とするのか、自分の所属する部署とするのか、で変わってきます。

そのグロスのデータを眺めることで……

  • データ分析結果の精度がよくなる
  • データ分析結果のビジネス活用が良い方向に向く

……という恩恵があります。

ぜひ、どうも売上分析しているのに、売上に貢献していないなと感じられていましたら、ぜひ試してみてください。データ分析のビジネス活用が進展する、一つのきっかけになるかもしれません。

補足:

以下は、もっとも簡単な異常スコアの求め方です。数量データにしか使えません。統計学上は、1変量のマハラノビス距離と呼ばれているものです。

異常スコア=|データの数値-平均値|÷標準偏差

閾値は、1と2、3で、異常スコアが1未満であれば問題なし。

上昇傾向や下降傾向などのトレンドがデータにある場合には使えません。そのときは、階差処理という前処理をデータに実施する必要があります。ちなみに、階差処理とは「前期のデータとの差」を新しいデータにするということです。何度か階差処理をすると、上昇傾向や下降傾向などのトレンドがデータから消えます。

詳細は、別のところで説明いたします。