第82話|データ分析で課題解決しなくてもいいじゃない! 解決さえすれば

第82話|データ分析で課題解決しなくてもいいじゃない! 解決さえすれば

社内に溜まっているデータを使って何かしろ!

外からデータを買ってきて、何かできないか?

データが社内にあろうが、社外にあろうが、いきなり何かしろ! と言われても、言われた方が唖然とするだけではないでしょうか。

すでにデータ活用のアイディアがあるのなら問題ないかと思います。しかし、多くの場合、会社の上の方から降ってくるようです。

データは上手く使えば「強力な武器」になります。

武器は、その武器を使う戦場が無ければ使いようがありません。武器を使う場面がなければ、武器が強力だろうが貧弱だろうがどうでもよいことになります。なぜならば、武器を使えないからです。

ここでいう戦場とは、ビジネス上の課題解決の場面になります。

今回は、「データ分析で課題解決しなくてもいいじゃない! 解決さえすれば」というお話しをします。

主役は誰だ!

今までデータ活用やその分析を積極的に実施していなかった企業が、データ分析で何かしようと取り組み始めた頃、多いのが主役をデータ分析そのものにしてしまうこと。

データ分析はあくまでも課題解決の手段の一つにすぎません。

例えば、データを使って、売上アップ! コストカット! 生産性向上! 効率化! などなどが達成することを目指します。

別にデータを上手く使おうが、データを全く使うことがなかろうが、これらのことが達成されれば十分なはずです。

データを積極的に使うからには、データを全く使うことがない場合に比べ、何かが大きく異ならなければ、データ分析をする意味はないでしょう。

例えば、データを使うことで、スピードがあがった、精度が向上した、少ない人数で可能になった、意思疎通が容易になった、などなど…… なんでも構いませんが、何かしら違いを作る必要があります。

データは脇役でいいじゃない…… でも、迷脇役ではありません

要するに、データ分析は脇役なのです。

単なる脇役ではなく、スゴイ脇役です。名脇役です。

しかし、上手く使ってあげないと、名脇役が迷脇役になってしまいます。

一番よくないのが、出しゃばり主役に躍り出でしまうこと。

例えば、流行りのデータ分析のアルゴリズムであるディープラーニング。

ディープラーニングは単なるデータ分析の一手法にすぎません。手段であるデータ分析の中の、選択肢の一つにすぎません。これが主役になってしまうという現象が、ここ数年多々見受けられます。

ディープラーニングの技術を使って何かしろ! という現象です。かなりの出しゃばりかたです。

例えば、画像解析系のデータ分析の世界でさえ、ディープラーニングでやっていたことを、ディープラーニング以外でやるようになったら、上手くいったというケースも少なくありません。

とは言え、画像解析系のデータ分析の世界ではディープラーニングの相性はかなり良いと思いますが……

ディープラーニングと比較的相性の良くない時系列解析の世界で、ディープラーニングで強引に予測モデルを作っても、大抵の場合、ろくなことになりません。

これは、ディープラーニングのことを、ニューラルネットワークやディープニューラルネットワークなどと言われていた時代から分かっていたことですが、なぜかチャレンジしてしまうようです。

チャレンジすることは悪くはありませんが、ディープラーニングありきで他のモデルの可能性をあまり考えないのは、何とももったいないことです。

課題先行で考える逆算思考

データ分析が、迷惑な脇役にならないようにするにはどうしたらよいのでしょうか。

特別なことはありません。単純に、課題先行で逆算思考で考えていけば済みます。

ここでいう逆算思考とは……

  • 先ず解決すべき課題を考え、
  • その課題が解決された状態を考え、
  • その課題を解決するためには何をすべきかを考え、
  • 仮にデータ分析が必要ならば、どのような分析が必要かを考え、
  • その分析をするために必要なデータは何かを考え、

……といった感じで、どのような課題を解決すべきかや、その課題が解決された状態から逆算してどのようなデータ分析をすべきなのかを、考えていく思考法です。

ここで注意すべき点が2つあります。

  • 1つは、先に課題を考えるということ
  • もう1つは、課題を考えるときデータ分析ということは全く考えないということ

つまり、データを使うかどうかに関係なく「課題を洗い出す」ということです。

課題が解決すれば、データ分析を使う必要はない

洗い出した課題の中には……

  • データを使う必要が全くない課題
  • データ分析をフル活用したほうがよい課題
  • ちょっとだけデータの力を借りた方がよい課題

……などなどが混在しています。

正直、「データ分析をフル活用したほうがよい課題」はほとんどありません。

データ分析で何かやるぞ! という掛け声が上がったとき、多くの場合、この「データ分析をフル活用したほうがよい課題」を探している気がします。

大多数の課題は、「ちょっとだけデータの力を借りた方がよい課題」です。

ちょっとだけデータの力を借りた方がよい課題」をいきなり見つけるのは至難の業で、データ分析の実務での活用経験が必要になります。

その実務でのデータ分析の活用経験になく「ちょっとだけデータの力を借りた方がよい課題」を見つける方法が、先ほど言及した逆算思考です。

極論を言ってしまえば、課題が解決すれば、データ分析を使う必要はありません。

そして、課題が解決すれば喜ばれますし、大きなビジネス成果の一つとなることでしょう。

データ分析は道具にすぎません。無理して道具を使う必要はありません。紙を切るためにノコギリを使うことがないのと同じです。逆に、紙を切るのにノコギリを使おうとすると、かなり大変なことでしょう。データ分析も同じです。無理くり使おうとすると、かなり大変なことでしょう。

何を言いたいかというと、データ分析を使うかどうかに関係なく課題を解決すればよい! ということです。

幸いにも、多くの課題は「ちょっとだけデータの力を借りた方がよい課題」です。

このような課題は、「データ分析以外でやることがいっぱい」+「データ分析でやることがちょっとだけ」という感じでしょう。

つまり、課題解決の大部分の動きは、データ分析と関係ないことをやるということです。このことを認識することは非常に重要です。

今回のまとめ

今回は、「データ分析で課題解決しなくてもいいじゃない! 解決さえすれば」というお話しをしましす。

今までデータ活用やその分析を積極的に実施していなかった企業に多いのが、主役をデータ分析にしてしまうことです。

データ分析はあくまでも課題解決の手段の一つにすぎません。手段の一つなので、別の手段でもよいわけです。
端的に言えば、データ分析は脇役で、使うからには違いを作る必要があり、実際に違いを作れるので注目されているわけです。

つまり、データ分析は名脇役です。決して、迷脇役ではありません。迷惑な脇役にならないように気を付ける必要があります。

迷惑な脇役にならないようにするためには、課題先行で逆算思考で考えていけばよいでしょう。

逆算思考とは、どのような課題を解決すべきかや、その課題が解決された状態から逆算して、必要なデータ分析や、必要なデータを考えていく思考法です。

ということは、最初にすべきはデータ分析を使うかどうかに関係なく、単純にその組織の課題を洗い出すことから始めます。

洗い出した課題の中には……

  • データを使う必要が全くない課題
  • データ分析をフル活用したほうがよい課題
  • ちょっとだけデータの力を借りた方がよい課題

……などなどが混在しています。

データ分析は脇役です。課題解決の道具にすぎません。無理して使う必要もありません。課題が解決すれば、データ分析を使う必要はありません。

しかし、データを上手く使って何かやるぞ! と意気込む企業の多くが、「データ分析をフル活用したほうがよい課題」をいきなり探しにいっている気がします。そのような課題は稀です。

多くの課題は「ちょっとだけデータの力を借りた方がよい課題」で、実際に「データ分析以外でやることがいっぱい」+「データ分析でやることがちょっとだけ」という感じになります。

つまり、データ分析だけでは課題解決は程遠く、課題解決のためには、データ分析と関係ないことをたくさんやるということです。