第266話|セールスアナリティクスと5つのMRR(Monthly Recurring Revenue)

第266話|セールスアナリティクスと5つのMRR(Monthly Recurring Revenue)

定額課金のサブスクビジネスでよく活用される指標にMRR(Monthly Recurring Revenue)を元に計算するQuick Ratioという指標があります。

このQuick Ratioは、経営分析などで利用される当座比率(Quick Ratio)ではありません。事業やサービスの成長性を測る指標です。

このQuick Ratioと、その元になる指標である5つのMRR(Monthly Recurring Revenue)は、サブスクビジネス以外でも利用可能です。

今回は、「セールスアナリティクスと5つのMRR(Monthly Recurring Revenue)」というお話しをします。

MRR(Monthly Recurring Revenue)

MRR(Monthly Recurring Revenue)は、直訳すると「月次経常収益」です。毎月計上される売上(収益)です。

例えば……

MRR = 顧客数 × ユーザ平均単価

……みたいに単純に数式で表現されます。

この数式から分かるとおり、MRRは……

  • 顧客数(月単位)
  • 顧客あたりの売上(月単位)

……の2つの要因で増減します。

5つのMRR

MRRを、5つのMRRに分けて考えることができます。

  • New MRR :新規顧客からもたらされるMRR
  • Reactivation MRR:休眠顧客が復活しもたらされるMRR
  • Expansion(upgrades) MRR:取引額の増えた既存顧客から得られるMRR
  • Contraction(Downgrades) MRR:取引額の減った既存顧客から得られるMRR
  • Churned MRR:離反顧客から得られたであろうMRR

Reactivation MRR(休眠顧客が復活しもたらされるMRR)の扱い(New MRRとみなす、Expansion MRRとみなす、など)によっては、4つのMRRになります。

以上の5つのMRR指標を、データを使って効率的に良い数値にするのが、セールスアナリティクスという技術です。

  • New MRR → 新規顧客開拓のためのセールスアナリティクス
  • Reactivation MRR → 休眠顧客の復活させるためのセールスアナリティクス
  • Expansion MRR → 取引額を拡大するためのセールスアナリティクス
  • Contraction MRR → 取引額を縮小させないためのセールスアナリティクス
  • Churned MRR → 離反せないためのセールスアナリティクス

成長指標Quick Ratio

5つのMRRは次の2つのMRR指標に集約されます。

  • 増益MRR:New MRR + Reactivation MRR + Expansion MRR
  • 減益MRR:Contraction MRR + Churned MRR

成長指標Quick Ratioは、この2つのMRR指標をもとに計算されます。

Quick Ratio = (増益MRR) / (減益MRR)

この数式から分かる通り、1以上でないとビジネスとして危ういです。

ちなみに基準として「1」と「4」が用いられます。1未満だとヤバい、4以上だと素晴らしいとなります。

このQuick Ratioを、データを使って効率的に良い数値にするのが、セールスアナリティクスという技術とも言えます。

減益MRRだけに着目したのが、収益チャーンレート(Revenue Churn Rate)です。通常、チャーンレートと言うと、減った顧客数の割合を示す顧客チャーンレート(Customer Churn Rate)が使われます。収益チャーンレートは、減った収益の割合を示すものです。

  • 顧客チャーンレート(Customer Churn Rate)=減少顧客数÷月初顧客数
  • 収益チャーンレート(Revenue Churn Rate)=減益MRR÷月初MRR

MRRにできるだけ販管費を入れたほうがいい

New MRRを上げるためのコストパフォーマンスが一番不効率です。要は、既存顧客を維持・拡大するコスト(販管費)よりも、新規の顧客を増やす方が大変だと言うことです。

そう考えると、可能ならば販管費給料や交通費、広告宣伝費、販売促進費、家賃、光熱費など)を考慮したMRRを算出したほうがいいでしょう。

しかし現実的には、人件費などを、どのMRRに費やしたのか分割しにくいなどの問題が起こります。それを毎月実施するのも大変です。

そのため、最終的なMRRを計算するときのみ考慮する、もしくは年間で計算するときのみ考慮するなどが考えられます。

APRとRPM

年単位で計算するMRR的なものがあります。

  • ARR(Annual Recurring Revenue):年間経常収益
  • RPM(Recurring Profit Margin):経常利益率

ARRは、単にMRRの年単位版です。RPMは、APRから原価や販管費などの必要なコストを引いた営業利益を、APRで割ったものです。

RPM=(APR-原価-販管費)÷APR

無料料金プランを導入している場合

最近のサブスクビジネスは、お試しの無料料金プランと、幾つかの有料料金プランを設定しているサービスがあります。

無料料金プランのユーザを、顧客(ユーザ)に含めるかどうかで、ユーザ平均単価の計算方法が変わります。

  • ARPPU(Average Revenue Per Paid User)=ARR÷有料ユーザ:ユーザに無料ユーザを含めない
  • ARPU(Average Revenue Per User)=ARR÷(無料ユーザ+有料ユーザ):ユーザに無料ユーザを含める

ちなみに、無料ユーザから有料ユーザの転換率(コンバージョンレート)は、次のように計算できます。

ARPU ÷ ARPPU = 有料ユーザ ÷(無料ユーザ + 有料ユーザ)

もう少し話しを進めます。顧客獲得コストの妥当性の分析です。

無料ユーザから得られるであろう平均LTV(顧客生涯価値)は、次のように計算できます。

平均LTV=ARPU×平均ユーザ期間

ユーザ期間は、無料ユーザだった期間有料ユーザだった期間を合計した値です。

無料ユーザを1人獲得するのに必要な費用CAC(Customer Acquisition Cost)と言います。

このCAC平均LTVを比較することで、顧客獲得戦略の有効性や見直し、さらに料金体系の見直しにも利用できます。「平均LTV÷CAC 」の値が大きければ大きいほどいいです。1を超えていないとビジネスとして厳しいです。3以上が好ましいと言われています。

今回のまとめ

今回は、「セールスアナリティクスと5つのMRR(Monthly Recurring Revenue)」というお話しをしました。

定額課金のサブスクビジネスでよく活用される指標にMRR(Monthly Recurring Revenue)を元に計算するQuick Ratioという指標があります。このQuick Ratioは、経営分析などで利用される当座比率(Quick Ratio)ではありません。事業やサービスの成長性を測る指標です。

このQuick Ratioと、その元になる指標である5つのMRR(Monthly Recurring Revenue)は、サブスクビジネス以外でも利用可能です。

MRR(Monthly Recurring Revenue)は、直訳すると「月次経常収益」です。毎月計上される売上(収益)です。

MRRを、5つのMRRに分けて考えることができます。

  • New MRR :新規顧客からもたらされるMRR
  • Reactivation MRR:休眠顧客が復活しもたらされるMRR
  • Expansion(upgrades) MRR:取引額の増えた既存顧客から得られるMRR
  • Contraction(Downgrades) MRR:取引額の減った既存顧客から得られるMRR
  • Churned MRR:離反顧客から得られたであろうMRR

以上の5つのMRR指標を、データを使って効率的に良い数値にするのが、セールスアナリティクスという技術です。

  • New MRR → 新規顧客開拓のためのセールスアナリティクス
  • Reactivation MRR → 休眠顧客の復活させるためのセールスアナリティクス
  • Expansion MRR → 取引額を拡大するためのセールスアナリティクス
  • Contraction MRR → 取引額を縮小させないためのセールスアナリティクス
  • Churned MRR → 離反せないためのセールスアナリティクス

5つのMRRは次の2つのMRR指標に集約されます。

  • 増益MRR:New MRR + Reactivation MRR + Expansion MRR
  • 減益MRR:Contraction MRR + Churned MRR

成長指標Quick Ratioは、この2つのMRR指標をもとに計算されます。

Quick Ratio = (増益MRR) / (減益MRR)

この数式から分かる通り、1以上でないとビジネスとして危ういです。ちなみに基準として「1」と「4」が用いられます。1未満だとヤバい、4以上だと素晴らしいとなります。

このQuick Ratioを、データを使って効率的に良い数値にするのが、セールスアナリティクスという技術とも言えます。