第135話|企業規模なんて関係ない! それがデータサイエンス

第135話|企業規模なんて関係ない! それがデータサイエンス

データ活用の上手くいっている企業、どのような企業を思い浮かべるでしょうか?

人によって思い浮かべる企業像は異なることでしょう。

例えば、GAFA(Google, Amazon, Facebook, Apple)などの米国IT企業です。

もしくは、資本力と多くの人財を抱えている大企業と答える方もいます。

日本国内企業だと、リクルートやネット系企業(Yahooなど)、ゲーム系企業(DeNAなど)、SNS系企業(LINEなど)、通信キャリア系企業(Softbankなど)など。どちらかと言えば大企業化した勢いのある新興企業を応える方もいます。

実際はどうなんでしょうか?

今回は、「企業規模なんて関係ない! それがデータサイエンス」というお話しをします。

大企業でないと「できない病」

よく、「大企業だから……」という方がいます。

大企業でないと、データ取得やデータ基盤構築、分析基盤などへのデータ投資ができない」というのが、よく聞く回答です。

はっきり言うと、データ活用の成否と企業規模は関係ありません

よくよく考えてみれば、大企業化した勢いのある新興企業も、数年・数十年前は零細企業です。

GAFAもYahooもDeNAもLINEもSoftbankも数十年までは、出来立てほやほやの弱小零細企業だったことでしょう。

データ活用の取り組み状況

2016年に報告された一般財団法人 商工総合研究所の調査報告書に「中小企業のIT活用」というものがあります。

その中に、「データ活用の取り組み状況」に関する調査結果が入っています。

見て頂くと分かりますが、以下のような結果になっています。

約50%がデータ活用にチャレンジし
内50%超(全体の27%)が
データ活用で成果を上げている

意外と多いと感じる方もいれば、逆に意外と少ないなと感じる方もいることでしょう。

私の印象では二極化しています。

データ活用している企業の周囲にはデータ活用している企業がおりデータ活用していない企業の周囲にはデータ活用していない企業がいるようです。

業種も資本規模は関係ない

一般財団法人 商工総合研究所の調査報告書「中小企業のIT活用」の「データ活用の取り組み状況」から面白いことが分かります。

データ活用が上手くいっているかどうかと、業種が関係ないことが分かります。

さらに、データ活用が上手くいっているかどうかと、資本規模も関係ないことが分かります。

  • 資本金 3千万円未満:成功割合 26.2%
  • 資本金 3千万円~5千万円未満:成功割合 31.5%
  • 資本金 5千万円~1億円未満:成功割合 26.2%
  • 資本金 1億円以上:成功割合 28.0%

※成功割合=「活用し、成果を上げている」回答者 ÷ 全回答者

資本規模が大きいほど、失敗しやすい

データ活用の取り組み状況」から、もう一つ面白いことが分かります。

それは、「資本規模が大きいほど、失敗しやすい」ということです。

データ活用が上手くいっているかどうかと、資本規模は関係ないのですが、データ活用を図っているかどうかとは、資本規模は関係あります

どういうことかと言いますと、資本規模が大きいほど、データ活用を図っている企業の割合が増える(チャレンジする企業の割合が大きくなる)ということです。

  • 資本金 3千万円未満:チャレンジ割合 44.9%(=26.2%+18.7%)
  • 資本金 3千万円~5千万円未満:チャレンジ割合 49.2%(=31.5%+17.7%)
  • 資本金 5千万円~1億円未満:チャレンジ割合 57.3%(=26.2%+31.1%)
  • 資本金 1億円以上:チャレンジ割合 64.0%(=28.0%+36.0%)

※チャレンジ割合=(「活用し、成果を上げている」回答者+「活用を図っているが、あまり成果は上がっていない」回答者) ÷ 全回答者

そのため、資本規模が大きいほど、チャレンジした場合の成功する確率(成功割合÷チャレンジ割合)が低くなっているのです。

  • 資本金 3千万円未満:チャレンジした場合の成功する確率 58.4%
  • 資本金 3千万円~5千万円未満:チャレンジした場合の成功する確率 64.0%
  • 資本金 5千万円~1億円未満:チャレンジした場合の成功する確率 45.7%
  • 資本金 1億円以上:チャレンジした場合の成功する確率 43.8%

※チャレンジした場合の成功する確率=「活用し、成果を上げている」回答者÷(「活用し、成果を上げている」回答者+「活用を図っているが、あまり成果は上がっていない」回答者)

データ活用の成果

ビジネス視点で考えたとき、業績に良い影響を与えているかどうかは、非常に視点です。

では実際に、データ活用で上手くいったと回答した企業の業績はどうなのでしょうか。

活用し、成果を上げている」と回答しているぐらいですから当然ですが、「中小企業のIT活用」の「データ活用の取り組み状況」によると、少なくとも売上増加に良い影響を与えていることが分かります。

売上増だけではなく、利益アップやコストカットなども重要です。

幸運なことに、「中小企業のIT活用」の調査データの中に、利益アップやコストカットに成果を上げていることが分かるものがあります。

中小企業のIT活用」の「データ活用の成果」に対する回答(複数回答)です。

  • 1位:生産効率、業務効率の向上(63.1%)
  • 2位:顧客管理、マーケティング(37.9%)
  • 3位:業務内容の見直し(34.9%)

データ活用で上手くいったと回答した企業の半数は、生産性が高まったのです。

今回のまとめ

今回は、「企業規模なんて関係ない! それがデータサイエンス」というお話しをしました。

資本規模が大きいほど、失敗しやすい」という事実があります。

一般財団法人 商工総合研究所の調査報告書「中小企業のIT活用」の「データ活用の取り組み状況」をもとに成功確率を計算すると、以下のようになります。

  • 資本金 3千万円未満:チャレンジした場合の成功する確率 58.4%
  • 資本金 3千万円~5千万円未満:チャレンジした場合の成功する確率 64.0%
  • 資本金 5千万円~1億円未満:チャレンジした場合の成功する確率 45.7%
  • 資本金 1億円以上:チャレンジした場合の成功する確率 43.8%

資金力のある企業ほど、データ活用にチャレンジしています。チャレンジするのですが、資金力のある企業ほど成功確率が下がるのです。

チャレンジすることは非常に良いことなので、トライ&エラーでそのうち上手くいくようになるでしょう。

言いたいことは、「データ活用の成否と企業規模は関係ない!」ということです。

よく、「大企業だから……」とか、「大企業でないと、データ取得やデータ基盤構築、分析基盤などへのデータ投資ができない」とか言う方もいますが、現実はそんなことはありません。

データ活用の上手くいっている企業として多くの人が思い浮かべる、米国IT企業の雄であるGAFA(Google, Amazon, Facebook, Apple)や、日本国内の大企業化した勢いのある新興企業も、数年・数十年前は零細企業です。

知恵とアイデアが重要だったりします。データは、それらをサポートし、それらの実現を加速化し、効率化し、拡大するのに非常に有用です。