第480話|分析結果を「どう説明するか」で、仕事の評価は決まる

第480話|分析結果を「どう説明するか」で、仕事の評価は決まる
分析自体は間違っていないと思うのですが……

これは、分析担当者から非常によく聞く言葉です。

データは十分に揃っている。使っている手法も一般的で妥当。検証結果も悪くない。

それでも……

  • 会議ではあまり議論が深まらない
  • 次の意思決定に使われない
  • 評価や成果として扱われない

……といったことが起こります。

このとき問題になっているのは、分析の正しさそのものではありません。

多くの場合、問題は説明の設計にあります。

評価される分析は、いきなり「結論」を言わない

少し意外に感じるかもしれませんが、実務で評価される分析ほど、最初から結論を強く言い切ることはありません。

たとえば、次のような説明を想像してみてください。

分析の結果、この施策が最も効果的でした。
したがって、次回も同じ施策を実施すべきです。

一見すると分かりやすい説明ですが、会議の場では次のような疑問が生まれがちです。

  • 他の選択肢は本当にダメだったのか?
  • 前提が変わったら、この結論はどうなるのか?
  • リスクはどこにあるのか?

組織の中で最終的な意思決定を行うのは、多くの場合、分析担当者ではありません。分析の役割は、結論を押し付けることではなく……

  • 判断に必要な論点を整理し
  • 選択肢を並べて比較できる状態を作り
  • 判断に伴うリスクを見える形にする

……ことにあります。

そのため、「これが正解です」と言い切る分析は、かえって判断の余地を狭めてしまうことがあります。

説明は「誰が決めるのか」から逆算する

説明設計で最初に考えるべきなのは、次の問いです。

誰が、この分析結果を使って意思決定をするのか

たとえば、同じ分析結果であっても、相手が変われば、求められる説明は大きく変わります。

  • 現場担当者:具体的に何をすればよいのか
  • マネージャー:複数案の比較と優先順位
  • 経営層:全体への影響とリスクの大きさ

売上改善の分析結果を説明する場合でも……

  • 現場向けには「どの施策を、いつ、どれくらいやるのか」
  • マネージャー向けには「施策AとBを比べると、どちらが効率的か」
  • 経営層向けには「全体利益や中長期への影響はどうか」

……といったように、示すべき情報は異なります。

この整理をしないまま説明を始めると、「話は分かるが、結局どう判断すればいいのか分からない」という反応になりがちです。

「なぜそうなったか」より先に示すべき全体像

多くの分析担当者は、「なぜその結果になったのか」を丁寧に説明しようとします。

もちろん、それ自体は重要です。

しかし、実務の意思決定の場では、順番が逆になることが少なくありません。

たとえば……

  • この変数が効いていて…
  • この期間で傾向が変わっていて…

……と理由の説明から入ると、聞き手は次の疑問を抱きます。

  • それで、結局どの選択肢を考えればいいの?
  • 判断のポイントはどこなの?

判断する側が最初に知りたいのは……

  • 取り得る選択肢は何か
  • それぞれのメリット・デメリット
  • 判断した場合に何が起こるのか

……という全体像です。

この枠組みを示してから理由を説明することで、初めて「なぜそうなったか」が意味を持ちます。

説明できる分析は「リスク」をあらかじめ言語化している

評価される分析には、もう一つ共通点があります。

それは……

うまくいかなかった場合の話が、最初から用意されていること

……です。

あらかじめ言語化しておくことで、判断する側は「最悪の場合」を想像しやすくなります。

  • この前提が崩れたら、結論はどう変わるのか
  • 想定外の事象が起きた場合、どこに影響が出るのか

結果として、意思決定に対する心理的なハードルが下がり、「判断しやすい分析」になります。

説明設計は「話し方のうまさ」ではなく「設計思想」

説明が苦手だから評価されない、というわけではありません。

問題は……

  • 何を説明すべきか
  • どこまで説明すれば十分か
  • どこは割り切って省略してよいか

……といった点を、分析の段階で設計していないことにあります。

説明できる分析とは……

説明を始める前から、説明の構造が決まっている分析

……だと言えます。

これは個人の話術やプレゼン能力ではなく、分析そのものの設計の問題です。

今回のまとめ

分析結果の評価は……

  • 正しいかどうか
  • 手法が高度かどうか

……だけで決まるわけではありません。

実務では……

  • 判断に使えるか
  • 責任を引き受けられるか
  • 説明に耐えられるか

……という観点で評価されます。

説明設計は、分析を単なる成果物から、仕事として評価されるアウトプットへと変える鍵です。