第21話|データ分析が上手くいかないなと感じたら、管理会計視点で指標(KPIやKGIなど)を見直そう

第21話|データ分析が上手くいかないなと感じたら、管理会計視点で指標(KPIやKGIなど)を見直そう

最近いくつかの企業の方からよく聞くのが、

全社的にBIツールを導入したけど、活かし方が分からない

というもの。

BI(ビジネス・インテリジェンス)ツールとは、データ分析などを専門的に学んでいない人でも、簡単に使える分析ツール。ここ数年で急速に広がりました。有名なところでは、TableauQlikViewPowerBIなどがあります。

BI(ビジネス・インテリジェンス)ツールを全社的に導入した企業では、経営層から部課長の管理者層、そして営業やマーケティングなどの現場まで、幅広くBI(ビジネス・インテリジェンス)ツールが使われています。

BI(ビジネス・インテリジェンス)ツールを導入することで、データを集計した数字を日々モニタリングし、モニタリングしている数字の中に気になる箇所があれば、さらに深掘りをするための分析を簡単にすることができます。高度な分析はできませんが、集計レベルの簡単な分析であれば問題なくできます。

例えば、CRM(顧客関係管理システム)であれば、リード(見込み顧客)件数や受注件数、受注金額、予算とのギャップなどを、モニタリングすることになることでしょう。

この日々モニタリングする数字は、BI(ビジネス・インテリジェンス)ツールで作成したダッシュボード(データの集計結果をグラフなどで表現するレポート画面)に表示されます。

しかし、BIのダッシュボードを定期的に眺めて終わり、というケースが多々見受けられます。要するに、数字を確認するけど分析はしない、ということです。蓄積したデータの「見える化」で終わってしまっているケースです。

BIツールに限らず、蓄積したデータの「見える化」で終わってしまっているケースは多いのではないでしょうか。

見える化で終わってしまう原因は色々ありますが、非常に多い原因としてモニタリングすべき数字、つまり「指標」の問題があります。

結局、「何をモニタリングをするのか?」が重要

ビジネスのデータ活用でよく見るシーンとして、BIツールなどのダッシュボードに表示される数字を日々モニタリングすることがあげられるでしょう。このモニタリングをする数字を「指標」と呼びます。指標のモニタリングが、データ活用の第一歩です。

指標には、GI(Goal Indicator、目標達成指標)PI(Performance Indicator、業績評価指標)の大きく2種類あります。

GIとは、その名が示す通り、データ分析結果をもとに達成すべきビジネス成果の目標の達成度合いを指標化したものです。PIとは、このGIを達成するために実施するプロセスの状況を知るための指標です。

例えば、営業活動で考えると、「受注件数」がGIとなり、「受注件数」の数字を上げるための営業プロセスである「引合→訪問→提案→受注」の「訪問件数」や「提案件数」がPIになります。

特に重要なGIをKGI(Key Goal Indicator、重要目標達成指標)と呼び、特に重要なPIをKPI(Key Performance Indicator、重要業績評価指標)と呼びます。

要するに、にBI(ビジネス・インテリジェンス)のダッシュボード(データの集計結果をグラフなどで表現するレポート画面)で眺めるのは、GI(Goal Indicator、目標達成指標)やPI(Performance Indicator、業績評価指標)といった「指標」になることでしょう。

よい指標の条件SMART

データ活用で使う指標が満たすべき5つの条件があります。SMARTと呼ばれるものです。

  • S】Specific: 具体的な「アクション」との結びつきが明確である
  • M】Measurable: 測定可能で「定量的」に数字で表現される
  • A】Achievable: 達成可能な「目標値」が定められている
  • R】Relevant: 利益などの「ビジネス成果と関連」している
  • T】Time: 目標達成までの「期限」が決められている

指標ですので、「Measurable(測定可能)」は当然満たさねければなりません。さらに、「Achievable(目標値がある)」と「Time(期限がある)」もビジネス活動で使う指標であれば、当然満たされていることでしょう。

問題なのが、「Specific(具体的アクションとの結びつき)」と「Relevant(ビジネス成果との関連性)」です。

使えない指標の多くは、「Specific(具体的アクションとの結びつき)」もしくは「Relevant(ビジネス成果との関連性)」のどちらかが満たされていません。要するに、指標から具体的なアクションが導き出せない、指標をあげても利益などのビジネス成果が連動しない、というケースです。

例えば、自社のWebサイトのアクセス解析ログなどを分析するインターネットのマーケターが増えています。

アクセス解析ログで簡単に出力される指標として、PV(ページビュー)数や訪問数、訪問者数などがあります。PV(ページビュー)数とは、Webサイトのページの閲覧回数の総数です。訪問者数とはWebサイトを訪問した「人の数」で、訪問数とはWebサイトを訪問した回数の総数です。一人の人が何度も訪問するため、訪問数(訪問された回数)は訪問者数(訪問した人の数)よりも多くなります。

たまに、PV(ページビュー)数が増えた減ったと、一喜一憂する方がいます。PV(ページビュー)数は、たくさん人が何回も訪問し、サイト内の様々なページをたくさん見られるほど、増えます。

自社ビジネスにとって、PV(ページビュー)数という指標が、自社の利益をどのように左右するのかが明確であれば問題ありません。しかし、企業のWebサイトの場合、PV(ページビュー)数が増えることが、自社の利益にどのような影響がどの程度あるのかが、明確でないケースが多いと思います。

このような指標は、利益などの「ビジネス成果と関連」していない指標であるため、SMARTの「Relevant(ビジネス成果との関連性)」が満たされません。さらに、PV(ページビュー)数という指標を見ることで、具体的なアクションが導き出せなければ、それはSMARTの「Specific(具体的アクションとの結びつき)」も満たしていないことになります。

管理会計から指標は設計する

データ活用上、指標を適切に設計することは重要になってきます。日々モニタリングするのが指標であり、データ活用の出発点になるからです。

この指標を見ることで、問題がありそうであれば深掘り分析を実施し、問題の要因を探ります。さらに、この指標を見ることで、次の打ち手(アクション)に繋げます。

先ほどのSMARTの5つの条件を満たしいる指標であれば、次の打ち手(アクション)に繋がるし、その次の打ち手(アクション)が自社の利益に良い影響を及ぼします。

少なくとも、自社の利益に良い影響を及ぼす指標を作るためには、管理会計を出発点にするとよいでしょう。

管理会計とは、経営者の意思決定や業績評価のための会計です。財務諸表(BSやPL、CFなど)を作り外部に公表する財務会計とは違います。普通は、管理会計を外部に公表することは、ほぼありません。

しかし、管理会計と聞くと身構える人もいます。それほど難しく考える必要はありません。

キーワードとしては、

  • 売上高
  • 変動費
  • 限界利益
  • 固定費
  • 営業利益

5つを最低限押さえておきましょう。

変動費とは、販売数量などと連動してい増えるコストで、原材料費や仕入原価などです。固定費とは、販売数量などと関係なく必要なコストで、人件費や経費(例:賃借料や光熱費、広告宣伝費など)などです。

売上高から変動費を引くと、限界利益(=売上高-変動費)になります。さらに、限界利益から固定費を引くと、営業利益(=限界利益-固定費)になります。

この中で最も重要になるのが、限界利益だと言われています。

モノを売った時点で得られるのが限界利益であり、この時点で赤字だどビジネスとして成り立ちません。ビジネスとは、いかに限界利益を獲得するのかを仕組み化したもので、儲ける仕組みの良し悪しがダイレクトに限界利益に現れます。

この限界利益を得るために、人を雇ったり事務所を借りたり設備投資をしたりします。つまり、固定費(人件費や賃借料など)は限界利益から支払われ、限界利益は固定費によって支えられています。

この管理会計の5つの指標(売上高、変動費、限界利益、固定費、営業利益)に、「どのような形でデータ分析が影響を与えるのか」を考え指標を設計することで、少なくともSMARTの「Relevant: 利益などの『ビジネス成果と関連』している」を満たすことができます。

例えば、人事関連のデータ分析であれば「人件費(固定費)の削減」や「人件費(固定費)の変動費化」(業務の一部をアウトソースする、など)などが考えられるし、購買関連のデータ分析であれば「原材料費(変動費)の値下げ交渉」や「原材料の仕入れ先のリスク分散(原材料費の高騰対策や安定供給)」などが考えられます。

営業やマーケティング活動のデータ分析であれば、売上高限界利益が分析テーマになることでしょう。

具体的なアクションが見えるまでブレイクダウン

SMARTの「Relevant(ビジネス成果との関連性)」を満たすためには、管理会計の5つの指標(売上高、変動費、限界利益、固定費、営業利益)を出発点に、指標設計すればよいことを説明しました。

では、SMARTの「Specific(具体的アクションとの結びつき)」を満たすためにどうすればよいのでしょうか。実は非常に単純で、管理会計の5つの指標(売上高、変動費、限界利益、固定費、営業利益)のどれかを出発点に、具体的なアクションが見えるまで指標を細かくすればよいのです。

要するに、管理会計の5つの指標(売上高、変動費、限界利益、固定費、営業利益)を出発点に指標設計をすれば、SMARTの「Relevant(ビジネス成果との関連性)」と「Specific(具体的アクションとの結びつき)」は満たされるのです。

営業活動やマーケティング活動は、比較的指標を細かくブレイクダウンしやすいです。というのも、いくつかの決まった「」があるからです。

例えば、先ほど例にあげた営業プロセス「引合→訪問→提案→受注」で考えてみます。よくある法人営業の新規顧客獲得のためのプロセスでしょう。

  • 管理会計の「売上高」から出発します。
  • 管理会計の「売上高」と直結する指標として「受注件数」や「平均受注金額」があげられます。「売上高=受注件数×平均受注金額」だからです。
  • さらに、「受注件数」に直結する指標として「提案件数」や「提案後受注率」があげられます。「受注件数=提案件数×提案後受注率」だからです。
  • さらに、「提案件数」に直結する指標として「訪問件数」や「訪問後提案率」があげられます。「提案件数=訪問件数×訪問後提案率」だからです。
  • さらに、「訪問件数」に直結する指標として「引合件数」や「引合後訪問率」があげられます。「訪問件数=引合件数×引合後訪問率」だからです。

このようにどんどん、営業やマーケティングなどのプロセスに従う形で、管理会計の「売上高」から指標を細かくブレイクダウンしていくことができます。

繰り返しになりますが、管理会計から指標(KPIやKGIなど)を作りこめば、SMARTの5つの条件を満たす指標を作ることができ、データ分析をビジネスに活かし易くなります。

データ活用がどうも上手くいかないなと感じたら、一度立ち止まって、現在使用されている指標を、SMART管理会計の視点で見直してみるとよいと思います。

ビジネスデータサイエンス支援カンパニー
株式会社セールスアナリティクス