第88話|データを溜めた! 「見える化」のその先へ進むために、データ分析活用上必要なこと

第88話|データを溜めた! 「見える化」のその先へ進むために、データ分析活用上必要なこと

「よし! 『見える化』だ!! そのためにデータ蓄積しろ!!!」

「見える化」の掛け声とともに、何かしらのデータ蓄積基盤を整備し、「見える化」に向けて動き出す企業も少なくありません。

しかし、思ったほどのビジネス成果という名のメリットを得ていない企業が多いようです。「見える化」によって得られるメリットを夢見て、「見える化」まではしたけど、その先へ進められない、というケースです。

最近では、「見える化」という名のデータ分析の活用基盤として、BI(ビジネスインテリジェンス)ツールを導入したけど、ダッシュボードという指標をみるための画面を作ったけど、確かに「見える化」までは達成したけど、ただ見えただけ…… という悲報をよく聞きます。

BIツールやDMP(データマネジメントプラットフォーム)などを導入することで、データがある整備され、いつでも分析できる状態に近づいた、と考えると非常な進歩です。しかし、ビジネス成果が出ないようだと、単なるIT投資の失敗と言われてしまうかもしれません。

今回は、「データを溜めた! 『見える化』のその先へ進むために、データ分析活用上必要なこと」というお話しをします。

「見える化」の効用

人は自分のやったことが「見える化」することで、モチベーションになったり、逆に危機感を募らせ行動に駆り立てることがあります。

例えば、小中高生時代。

勉強の成果として、模擬テストの点数が上がれば、勉強のモチベーションは上がります。努力の成果が見えるからです。

逆に、模擬テストの点数がどんどん下がれば、危機感を覚え何とかしなければと、日ごろの学習時間を増やしたり、何かしら工夫をするかもしれません。

このように、データを集め「見える化」することで嬉しいことも多いです。

多くの企業で、「見える化」というキャッチフレーズとともに、データを集め始めるケースも少なくありません。

「見える化」することで、問題が解決するかのような大きな期待を背負い、データだけがどんどん溜まっていきます。

「見える化」の限界

しかし、「見える化」には限界があります。

先ほどの例で挙げた、小中高生時代の模擬テスト。自分自身の成績が点数という形で「見える化」されます。

テストの成績が落ちたからと言って、皆がみんな、危機感を覚え必死に傾向と対策を打ち、積極的な学習を実現すことは少ないことでしょう。

例えば、塾に通うことで塾の力を借りたり、家庭教師を付けることで家庭教師の力を借りたりするかもしれません。

つまり、単にモノゴトが見えただけで行動変容することは、非常に少ない、ということです。

人によっては、「見える化」したでけで行動変容するかもしれませんが、多くの場合は、そうでないのと思います。

もちろん、自分の命や財産が危機的な状況にでも陥れば別かもしれませんが。

「見える化」しただけでは、ものすごく意識が高くない限り、行動変容が起こり、何かしらアクションが起こることは少ないことでしょう。

動かかせないデータ分析に意味はない

人が関与するようなデータ分析の場合、その人を動かかせないと、データ分析そのものが無意味になる可能性が高いです。

人が関与するようなデータ分析の代表例が営業です。マーケティングも、どんなに便利なツールが登場し自動化が進んでも、結局のところ人が関与します。

工場もそうです。工場の最大の不確定要因は工員です。データを蓄積し、どんなに分析し、どんなに素晴らしい分析結果を導き出しても、その分析結果が現場で活きるかどうかは別問題です。

要するに、多くのデータ分析活用では人が登場し、それが最大の不確定要因であり、その人が行動変容が起こせないと、最大の阻害要因となり、ビジネス成果が生まれません。

「見てどうする」まで考える必要がある

では、行動変容を起こすためには、何が必要でしょうか。

非常に単純で、「見てどうする」まで考えればいいのです。「見える化」を考えるとき、「見てどうする」まで考え、データ収集をすればいいのです。

生産の品質管理の世界では昔から、実験計画法という手法を使い、データを収集する前に、どのようなデータをどのように収集するのかを検討していました。

マーケティングの世界では、この実験計画法を応用し、コンジョイント分析やABテスト、多変量テストなどといったものがあります。

「見てどうする」まで考えるというのは、無理難題を言っているわけではなく、昔からデータ分析の世界では、当たり前のように実施していたことです。

「2つの時制」で考える

「見てどうする」まで考えろ! と言われ、何も浮かばないような「見える化」は良くありません。ほぼ確実に失敗します。

要するに、「見てどうする」まで考え、何かしら思い浮かぶかどうかが、その「見える化」の良し悪しを決める、第1の評価基準です。

では仮に、「見てどうする」まで考え、何かしら思い浮かんだとします。第1の評価基準を突破したケースです。

これはこれで、1つ問題があります。

思い浮かんだことの良し悪しを評価しなければなりません。想像力が豊かな人であれば、いくらでも思いつくからです。

この場合、「2つの時制」で評価すると比較的上手くいきます。

「2つの時制」とは……

  • 「その見える化によって、具体的にどのようなアクションが起こせたのか」を考えるという過去評価
  • 「その見える化によって、具体的にどのようなアクションが起こせそうか」を考えるという将来評価

全くデータの蓄積がないケース

全くデータの蓄積がないケースでは、2番目の将来評価(その見える化によって、具体的にどのようなアクションが起こせそうか)で評価していくことになります。

具体的にどのようなアクションが起こせそうでなければ、その「見える化」には欠陥があるということです。

そして、この「その見える化によって、具体的にどのようなアクションが起こせそうか」は、現場に非常に近い人や経験者でなければ評価できません。

何かしらデータを蓄積をしているケース

しかしながら、多くの企業は、全くデータの蓄積がないということはなく、何かしらデータを蓄積をしているケースが多いです。

このようなケースでは、過去評価(その見える化によって、具体的にどのようなアクションが起こせたのか)と将来評価(その見える化によって、具体的にどのようなアクションが起こせそうか)の2つの時制で考え評価する必要があります。

既に何かしらデータ蓄積がなされていれば、何かしらビジネスに活かせているものとそうでないものがあるはずです。

過去評価は、何かしらビジネスに活かせているデータについて、具体的にどのようなアクションが起こっているのかを考え、「思い浮かんだこと」を過去の視点から考え評価することです。つまり、経験値ベースの評価です。

この「2つの時制」をもとに、単なる「見える化」を「見てどうする」に昇華させ、データ分析活用でビジネス成果を生むことができるように、なることでしょう。

もし、あなたの会社の中で、「見える化」止まりだなと感じることがありましたら、参考にして頂ければと思います。もしかしたら、そのデータ分析活用が、上手く回り始めるかもしれません。

今回のまとめ

今回は、「データを溜めた! 『見える化』のその先へ進むために、データ分析活用上必要なこと」というお話しをしました。

「見える化」というキャッチフレーズとともに、データを集め始めることがあります。確かに、データを集め見える化することで嬉しいことも多いです。嫌なことが明確に見えることで、何とかしなければという意識が芽生えるからです。

しかし、「見える化」には限界があります。

モノゴトが見えただけで行動変容することは、非常に少ない、ということです。人によっては、「見える化」したでけで行動変容するかもしれません。自分の命や財産が危機的な状況にでも陥らない限り、多くの人は見えただけで行動変容することは少ないことでしょう。

実際、営業などの人が関与するデータ分析の活用の場合、人を動かかせないデータ分析に意味はありません。なぜならば、行動変容を起こしアクションが起こせなければ、何も生まれないからです。

要するに、「見てどうする」まで考える必要があります。

単に「見える化」するだけではだめで、「見える化」を考えるとき、「見てどうする」まで考えてデータ収集をする必要があります。

ここで1つ問題があります。「見てどうする」まで考える場合、その考えたことの良し悪しを評価しなければなりません。

「2つの時制」で評価すると比較的上手くいきます。

「2つの時制」とは、「その見える化によって、具体的にどのようなアクションが起こせたのか」を考えるという過去評価と、「その見える化によって、具体的にどのようなアクションが起こせそうか」を考えるという将来評価です。

この「2つの時制」をもとに、単なる「見える化」を「見てどうする」に昇華させることができます。

もし「見える化」止まりだなと感じましたら、参考にして頂ければと思います。