第130話|「データによる見える化」で見たいものが異なる人々

第130話|「データによる見える化」で見たいものが異なる人々

データ分析・活用(データサイエンス実践)の第一歩として、よく「見える化」というキーワードがあります。

先ずは、データを収集し現状を「見える化」するところから始めましょう! というものです。

立場によって、「見える化」の意味合いが異なることがあります。

今回は、「『データによる見える化』で見たいものが異なる人々」というお話しをします。

システム側

システム担当者は……

  • データを発生させ蓄積し、
  • そのデータを加工・集計し、
  • 何かしらの数値を表示させるシステムを構築することを

……「見える化」と言っていることでしょう。

多くの人がイメージもこちらに近いかもしれません。

数値化さえすれば改善できると言わんばかりに、先ずは数値が見えるようにしよう! と言った感じです。

マネジャー側

管理層などのマネジャー側が見たいのは、現在どうなっていて、今後どうなりそうか、ということでしょう。

しかも、細かいことを知りたいのではなく、ざっくりとしたことです。プロセスよりの成果です。

例えば……

  • 売上予算に対する現在の達成度合いや、
  • このままいったときに売上予算を達成できそうなのか、
  • 達成できそうにないときの対策案と、
  • 対策を打ったときの予算の達成度合い、
  • 対策案そのものの妥当性

……などでしょう。

成果の実績と予測、そして対策案まで「見える化」したいのです。

成果の実績と予測といった定量的なものだけでなく、対策案という定性的な未来まで見たいのです。

現場側

現場側はどうでしょうか?

データリテラシーに応じて異なってきます。

  • システム側の考える「見える化」だけで、何が起こっているのかを把握し、今後どうなりそうかを推察し、対策を打てる人もいます
  • 一方で、数値化されただけでは何が起こっているのかが、いまいち分からず、ただ茫然と数値化された何かを眺めるだけで終わる人もいます

結局のところ、現場側で「見える化」したいのは、次に何をすべきかというアクションです。

このアクションは、マネジャー側の見たい対策案よりも詳細化かつ具体化されたものです。

要するに、現場の見たいものは「次のアクション」です。

模擬テスト結果と健康診断結果と財務諸表

模擬テスト結果健康診断結果財務諸表はよく似ています。

何かしらの数値がたくさんでてきます。

つまり、「見える化」された状態です。

模擬テスト結果

その中で一番分かりやすいのは、模擬テスト結果でしょう。

テストの点数や志望校への合格可能性の判定が「見える化」されているからです。

問題は、この数値を見ただけで、次のアクションにつながるか、ということです。

模擬テスト結果を見て次のアクションにつなげられる人もいれば、塾講師などのアドバイスをもらい次のアクションにつなげる人もいることでしょう。

健康診断結果

次に分かりやすいのは、健康診断結果でしょう。

何となくの健康状態と、精密検査を受けるべきかどうかが分かります。

しかし、細かく見てみると、専門家でないと分からない数値がたくさん掲載されています。

要するに、「見える化」されている数値だけを見ても普通の人には意味が分からないため、「見える化」されている数字だけを見て、次のアクションに移せる人は稀でしょう。

財務諸表

財務諸表の数字を読み取るには、健康診断結果同様に専門的なリテラシーが必要でしょう。

売上ぐらいであれば何となく分かりますが、利益あたりで怪しくなる人も少なくありません。

売上純利益や営業利益、経常利益、……など、「利益」と名のつく用語がわんさかとでてきます。管理会計まで広げると、限界利益や貢献利益、……など、新手の「利益」と名のつく用語が登場してきます。

「見える化」されています! と言われても、「数字がたくさんありますね……」と言うしかない状態です。

これだけでは、次のアクションにつながるかというと難しいでしょう。専門家の手が必要になります。

見たいのは「次のアクション」

要するに、「データで見える化」したいのは「次のアクション」だということです。

単に、数値化されました! ではよろしくなく、何をすればいのか分かりました! がいい状態ということです。

ですので、「数値化されました!」≒「何をすればいのか分かりました!」であれば問題はないです。

しかし、健康診断結果や財務諸表のように、数値で示されても、そもそもの数値の意味も分からず、具体的にどうすればいいのか見えてこず、という状態ではいけません。

そのようにならないために、そのドメイン(データを活用する現場、営業の現場や生産の現場など)に特化したデータ分析者(もしくはデータサイエンティスト)が必要になります。

今回のまとめ

今回は、「『データによる見える化』で見たいものが異なる人々」というお話しをしました。

どうしても「データによる見える化」となると、データを集めて集計し数値化することに注力されがちです。

しかし、本当に見たいのは「数値」ではありません。「データによる見える化」したいのは「次のアクション」です。

「次のアクション」が見えない「データによる見える化」は、無駄なIT投資になってしまうかもしれません。

そのためには、次のアクションの見える数値を、データで見えるようにすればいいのです。逆に、データで見える化した数値から、次のアクションが見えない場合、その数値化は考え直した方がいいでしょう。

現場サイドが見たい数値、そしてその数値が提供されるタイミングは、現場の人間しか分かりません。

既に「データによる見える化」に取り組んでいるものの、本当に活用され成果がでているのか不安な方は、一度現場にヒアリングしてみるのがいいと思います。